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【感想・あらすじ】『国境の南、太陽の西』

今日は『国境の南、太陽の西』の感想とあらすじを書いていきたいと思います。

 

発売された当初は『ノルウェイの森』の焼き直しであるとして低く評価した意見もあったようですが、今ではファンからの人気の高い作品の一つだと言えると思います。

 

 

 


主な登場人物

僕(ハジメ)… 関西出身で東京の大学に進学。結婚を機にジャズバーを経営。

 

島本さん…小学校5年生の時に転校してきた女の子。読書や音楽を通じてハジメと仲良くなる。

 

有紀子…ハジメの5歳年下の妻。

 

大原イズミ…ハジメの高校時代のガールフレンド



あらすじ


主人のハジメは小学校の頃、島本さんという女の子と仲が良くなるが島本さんは転校してしてしまう。
   ↓
ハジメは結婚してバーを経営しており、そのバーに島本さんが訪れ不倫関係が始まる。
   ↓
島本さんと一夜を共にした後、島本さんの姿は消え、主人公は妻とやり直す決意をする。


感想

①ねじまき鳥クロニクルが生んだ物語

小説は『ねじまき鳥クロニクル』を書いている途中で削った部分を元に書かれたそうです。そうした書き方をしたのは本作だけだそうです。

短編の『蛍』を膨らませて『ノルウェイの森』のが書かれていたり、『風の歌を聴け』からシリーズが4作あったりと時々他の作品との関連性が見られます。

 

②ファンタジーとリアリティーの中間

『羊をめぐる冒険』のようなファンタジー性が強い作品と『ノルウェイの森』のようなリアリティーがある作品があると言われています。

『国境の南、太陽の西』はその中間的な作品であると言えると思います。作品は基本的にはリアリティーがある設定で書かれています。一方で、心霊現象を思わせる描写が何か所か見られます。

 

主な霊的な描写をピックアップすると

・28歳のときに主人公は渋谷で島本さんらしい女性を見かけ、その後を追いかけ、それをやめるように言われ男から10万円を渡されるが、島本さんが消えた後10万円も消失する

 

・小説の最後の方で、島本さんによく似た女性を追っているとタクシーの中で表情を失ったイズミとで出会う。(イズミは高校時代のエピソードから一度も主人公の前に姿を現していなかったのでここで急に出てきたのが不自然)

 

・小説の最後の文章である「誰かがやってきて、背中にそっと手を置くまで、僕はずっとそんな海のことを考えていた。」って文章の「誰か」って言うのが妻の有紀子って書いてないところがイズミや島本さんを連想してしまう。

 

こうした描写から、バーを尋ねて来た島本さんはイズミの幽霊が化けていたものだと言うような解釈もあるようです。

 

③バブル崩壊

この作品が発売さたのはバブル崩壊直後の1992年です。逆玉の輿に乗ってジャズバーの経営を始めて成功すると言うストーリーには今よりもっと現実味があったでしょうし、島本さんという過去の憧れに再会するも苦渋の決断で現実と向き合う覚悟をするというようなラストには今よりもメッセージ性があったのではないかと思います。


④青と赤

この作品において赤と青という二色には象徴的な意味合いがあるようです。

まず、島本さんは小学校時代には青いセーターを良く着ており、再会した際も青いワンピースを着ています。

一方、イズミは赤いセーターを着ているという描写があります。

また、妻の有紀子は赤いチェロキーを運転してます。

そして、ハジメが経営していたジャズバーの店名は「ロビンズ・ネスト」といい、日本語では、「コマドリの巣」を意味します。コマドリは赤褐色の体をしており、卵は緑がかった青色だそうです。

 

⑤このくらいモテると人生絶対楽しい

ざっくり言うと、主人公のハジメは逃した魚が大きく見えて奥さんを傷つけるって言う話なのですが、読んでる間はそんなに主人公は悪い人間にも思えませんでした。
基本的に一人称で書いてあって主人公に感情移入し易さが要因でしょうか。

この小説は凄く村上春樹的な小説だと思います。主人公はジャズバーの経営とかしててこ洒落ててモテモテという。

このような特徴に関する爆笑問題の太田さんの村上春樹批判が面白くて、ざっくり言うと主人公が洒落過ぎててついていけない「だってサンドウィッチとか作って食べたりするんですよ?」って。

いいじゃん、サンドウィッチぐらい食べたってw

確かに、買ったサンドウィッチではなく、ハムを切るところから作り始めるという人は少ないかも知れません。

ただ、そういった料理の工程の描写などが表現として面白さやテンポを産んでいるのだと思います。

また、島本さんが居なくなったことを契機に妻とやり直すこと決意するという一見ご都合のいい決断をするあたりも村上作品的なラストだったように思います。


⑥ストーリーの形式はストレートな感じ

基本的に時系列通り進んでいき、長めの回想とか手紙とかはなく、また、幾つかの物語が交互に進んでいくというようなこともありません。

村上作品にしてはストーリーの形式的な工夫は少なく、ストレートな形式だといえるかと思います。




おわりに

最後まで読んで頂きありがとうございます。


今日はこの辺で(^_^)/